変額保険は増える?減る?運用リスクを理解

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低金利が続く中、保障に加えて資産形成も期待できる保険として注目されるのが「変額保険」です。支払った保険料の一部が株式や債券などで運用され、その運用実績によって将来受け取る死亡保険金や解約返戻金が増減するのが最大の特徴です。定額保険と異なり、運用が好調なら大きなリターンも期待できますが、反面、運用次第では元本割れのリスクも伴います。この記事では、「変額保険」の仕組み、メリット・デメリット、注意点を分かりやすく解説します。

【目次】

  1. 変額保険とは?運用実績で保険金が変動する仕組み
  2. 変額保険のメリット:インフレ対策と期待リターン
  3. 変額保険のデメリット:元本割れ等の運用リスク
  4. 変額保険と定額保険の主な違いと比較
  5. 変額保険が向いている人・選び方のポイント

変額保険とは?運用実績で保険金が変動する仕組み

変額保険は、生命保険の一種ですが、保険会社が保険料を安定的に運用し、契約時に定めた保険金額を保証する「定額保険」とは異なり、支払った保険料の一部を株式や債券などを組み入れた投資信託(特別勘定)で積極的に運用し、その運用実績によって将来受け取る保険金や解約返戻金が変動する保険です。

具体的には、以下のようになります。

  • 死亡保険金・高度障害保険金: 運用実績が好調な場合は、契約時に定めた基本保険金額に運用成果(変動保険金額)が上乗せされて支払われます。一方、運用実績が悪くても、多くの商品では基本保険金額は最低保証されています。つまり、死亡保障額は最低限確保されつつ、運用次第で増える可能性があるということです。
  • 解約返戻金・満期保険金(有期型の場合): これらは運用実績によって日々変動し、最低保証はありません。運用が好調なら大きく増える可能性がありますが、運用が悪ければ払い込んだ保険料の総額を下回る「元本割れ」のリスクがあります。

保険料から保険関係費用や運用関係費用が差し引かれた後、どの特別勘定(ファンド)で運用するかは、通常、契約者が自身の判断で選択・変更(スイッチング)できます。このように、変額保険は「保障機能」に「投資・資産運用」の要素を組み合わせた商品と言えます。

変額保険のメリット:インフレ対策と期待リターン

変額保険には、定額保険にはないメリットがあります。

  • 運用成果によるリターンの期待: 株式や債券などで運用するため、運用が好調な場合には、定額保険の予定利率を上回るリターンが期待できます。これにより、解約返戻金や満期保険金が大きく増える可能性があります。
  • インフレへの対応力: 物価が上昇するインフレ局面では、定額保険の固定された保険金額は実質的な価値が目減りしてしまいます。変額保険は、運用成果次第で保険金や解約返戻金が増加するため、インフレに連動して資産価値を維持・向上させられる可能性があります。長期的なインフレ対策としても考えられます。
  • 死亡保障の最低保証: 運用実績に関わらず、死亡保険金には基本保険金額の最低保証があるため、万が一の際の基本的な保障は確保されます。これは、直接投資信託などを購入する場合にはない、保険ならではのメリットです。
  • 運用対象の選択肢: 契約者は、国内外の株式・債券など、リスク・リターンの異なる複数の特別勘定(ファンド)の中から、自分の考えに合った運用先を選択できます。

これらのメリットは、特に長期的な視点で資産形成と保障を両立させたいと考える方にとって魅力的です。

変額保険のデメリット:元本割れ等の運用リスク

一方で、変額保険には注意すべきデメリット、特に運用に伴うリスクが存在します。

  • 運用リスク(価格変動リスク): 最大のデメリットは、運用実績が悪化した場合のリスクです。株価や債券価格の下落などにより、特別勘定の価値が下がると、解約返戻金や満期保険金も減少します。
  • 元本割れのリスク: 運用実績次第では、解約返戻金や満期保険金が、払い込んだ保険料の総額を下回る「元本割れ」の可能性があります。特に、市場が低迷している時期に解約や満期を迎えると、損失が発生するリスクが高まります。
  • 解約返戻金・満期保険金に最低保証がない: 死亡保険金には最低保証がありますが、解約返戻金や満期保険金には通常、最低保証がありません。貯蓄目的で加入する場合は、このリスクを十分に理解する必要があります。
  • 手数料(コスト)がかかる: 保険関係費用(死亡保障などのコスト)に加え、特別勘定の運用・管理にかかる信託報酬などの費用が保険料から差し引かれます。これらのコストが運用成果を押し下げる要因にもなり得ます。
  • 仕組みが複雑: 定額保険に比べて仕組みが複雑で、投資に関するある程度の知識が必要となります。

変額保険は、ハイリスク・ハイリターン(定額保険比)の商品特性を持つため、これらのリスクを許容できるかどうかが加入判断の重要なポイントになります。

変額保険と定額保険の主な違いと比較

変額保険と定額保険は、同じ生命保険でも性質が大きく異なります。主な違いを比較してみましょう。

比較項目 変額保険 定額保険
保険金・解約返戻金 運用実績により変動 契約時に確定・保証
死亡保険金 最低保証あり、運用により増加の可能性 契約時に確定・保証
解約返戻金 変動(最低保証なし、元本割れリスクあり) 予定利率に基づき計算(保証あり)
満期保険金(有期型) 変動(最低保証なし、元本割れリスクあり) 契約時に確定・保証
運用リスク 契約者が負う 保険会社が負う
期待リターン 高くなる可能性あり 低い(安定・確実)
インフレ対応力 相対的に高い 低い
仕組みの分かりやすさ やや複雑 シンプル

どちらが良い・悪いではなく、ご自身の目的やリスク許容度によって選択すべき保険は異なります。安定・確実性を求めるなら定額保険、リスクを取ってでも高いリターンやインフレ対策を期待するなら変額保険が選択肢となります。

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変額保険が向いている人・選び方のポイント

変額保険は、その特性から、以下のような方に向いていると考えられます。

  • 投資・運用に関心があり、リスクを理解・許容できる方: 資産運用のリスクを理解し、価格変動を受け入れられる方。
  • 長期的な視点で資産形成をしたい方: 短期的な価格変動に一喜一憂せず、長期的な運用成果を期待できる方。
  • インフレリスクに備えたい方: 将来の物価上昇に対して、資産価値の目減りを防ぎたいと考える方。
  • 保障を確保しつつ、運用も自分で行いたい(選択したい)方: 保険の枠内で運用先の選択などに関与したい方。

逆に、元本割れのリスクを取りたくない方、安定・確実な貯蓄を求める方、投資に関する知識が少ない方には不向きと言えます。

変額保険を選ぶ際のポイントは以下の通りです。

  • リスク許容度の確認: 自分がどの程度のリスクを受け入れられるかを考えます。
  • 特別勘定(ファンド)の選択肢を確認: どのような種類のファンド(国内株式、外国株式、債券など)が用意されているか、その内容や過去の運用実績(あくまで参考)、信託報酬などのコストを確認します。運用途中でファンドを変更できるか(スイッチング)もポイントです。
  • 手数料体系を理解する: 保険関係費用、運用関係費用、契約・維持費用など、どのようなコストがかかるのかを確認します。
  • 死亡保険金の最低保証を確認する: 最低保証の内容を確認します。
  • 複数の商品を比較検討する: 商品によって運用方針や手数料、選択できるファンドなどが異なります。必ず複数の商品を比較しましょう。
  • 専門家への相談: 仕組みが複雑なため、ファイナンシャルプランナーなど、中立的な立場の専門家に相談し、リスクも含めて十分な説明を受けることをお勧めします。

変額保険は、特性とリスクを十分に理解した上で、ご自身の資産状況やライフプランに合わせて慎重に検討することが重要です。


【まとめ】

変額保険は、保険料の一部を運用し、その実績によって保険金や解約返戻金が変動する、投資性の高い生命保険です。運用が好調なら定額保険を上回るリターンやインフレ対策が期待できる一方、運用リスクを自身が負い、元本割れの可能性もあるという特性を持っています。死亡保障には最低保証があるのが一般的ですが、貯蓄部分には保証がありません。加入を検討する際は、その仕組みとリスクを十分に理解し、ご自身の投資経験やリスク許容度を踏まえて、慎重に判断することが求められます。

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